essay:
Future housing

論考:
未来の家




This essay was written for the project “House of wind and light
この論考はプロジェクト「光と風が通る家」で書き起こしたものです。

We envisioned a future house.

A house reflects its social context and is planned to meet values, customs, and lifestyles of the time. To think about a future house is to imagine future society and lifestyles.

This apartment was built in 1979 based on a typical family apartment plan in Japan. Our clients wanted to have a flexible living environment allowing for various activities such as inviting guests and working.

A typical apartment plan centered around a space combining a dining room and kitchen, which started 40 years ago in Japan, is no longer effective and needs to be updated to meet diverse demands of today's society.

In this project, we intend to deconstruct a typical apartment based on a "room" and reconstruct it as a "place." Our focus was on how to incorporate the surrounding environment and envision lifestyles in the new era.

The space should be flexible to respond to changes in family structure and the key is to provide some "margin" allowing for possible changes in the future. An open-floor space provides a sufficient "margin" and furniture can be effectively used to utilize the "margin." In this way, we can propose unique solutions to meet various demands of clients.

By exploring a future house, we acknowledged unmeasurable values of spaces that cannot be evaluated based on conventional standards such as the floor area or the price per unit area. Deconstruction/reconstruction of evaluation criteria is a crucial factor in evolution of houses.



このプロジェクトでは、「未来の住宅」について考えている。

住宅とは本来、社会環境を色濃く反映し、その時代の価値観、振る舞い、生活によって部屋や動線が構成されている。住宅の変化で大きな部分としては、日本の場合、「畳での生活→椅子での生活」に変わったように、ライフスタイルの変化=住まいの進化であると言える。つまり、未来の家を想像するということは未来の社会や暮らしを想像するということと同義ではないかと思う。



本物件は1979年に建てられており、日本における典型的な核家族向け3LDKの間取り構成であった。施主は夫婦の2人暮らしであり、ゲストを呼んで食事を楽しんだり、家で仕事をしたりといった、現代の多様化したライフスタイルに適した自由な暮らし方を求めていた。

確かに、戦後の高度経済成長期における住宅供給の波に駆られて標準化された間取りや様式は、明らかにその当時の暮らしや文化を反映しており、寝食を分離することで新しい時代を迎えたことは間違いないだろう。しかしながら、家族像や働き方、テクノロジーが加速しながら変化している現代社会の中で、住宅の間取りが新陳代謝していないというこの状況は、やはり一つの社会的な課題であると感じている。


そこで、当プロジェクトではこれまで暮らし方を規定してきた「部屋」を解体して「場所」として再構築することを試みている。改修プロジェクトでありながら、周辺環境の要素を取り込むことを第一義に考え、既存建物との共生を維持し、新しい時代に則した暮らし方を想像できるかどうかが課題となった。



家族像が変化していくということは、空間自体が規定されておらず、柔軟であることが必要と考えた。そのためには、未来の暮らしの変化に合わせた「余白」を設計しておくことが重要ではないだろうか。ワンルームという間取りにはそのような魅力があり、家具にはそのような「余白」を活かせるポテンシャルがある。様々な形状の家具を検討する中で、拡張していった結果部屋のようになった案もあれば、一体化せずに分散化した家具となった案もある。家族構成の変化など将来的にそのような付加的な場所が出来上がることも想定した上で、今回はできるだけ大きな居住スペースが取れるような案を採用した。この考え方によると、様々なライフスタイルを抱える様々な世代のクライアントに対して、同じコンセプトの中でそれぞれユニークな回答を導き出せるといった可能性に満ちている。



このような新しいライフスタイルに適した「未来の住宅」を探っていくと、床面積や坪単価と言った規定の評価基準では測れない空間の豊かさに気づく。気積がものすごく大きいとか、実際に体感して初めてわかる空間の質のことである。このように、従来からある評価軸に変化が生まれるような空間を作り続けていくことも、住宅が進化していくためには非常に重要である。